2018.5.21 弁護士ブログ
落ちていた100円をネコババすると何罪にあたる?
5月16日,西城秀樹さんが亡くなったとの報道が流れました。
「傷だらけのローラ」や「YOUNG MAN」などの曲が有名ですが,私の世代だとやはりちびまる子ちゃんのエンディングテーマであった「走れ正直者」が強く記憶に残っております。
さくらももこさんが作詞した歌詞が素晴らしすぎる曲であります。今あらためて歌詞を見返してみても,こういう作詞ができる人は天才だな,と思うほかありません。
作曲はこれまた日本を代表する作曲家である織田哲郎さんです。私は織田さんの大ファンでありまして,どこかの市民会館でおこなわれた織田さんのコンサートで,お子さんが泣き出した際,織田さんが「走れ正直者」をワンフレーズひいて雰囲気を変えた,ような記憶があります(記憶はかなり曖昧です)。
さて,交差点で100円を拾った場合,もちろん警察に届けなければなりません。
落ちていた100円をネコババすると,その100円の持ち主との関係次第で窃盗罪か占有離脱物横領罪に問われることになります。
落とし物の取扱いについて定めているのが遺失物法という法律で,今まで真面目にこの法律を読み込んだことがなかったのですが,あらためて読んでみると,埋蔵物についても取扱いが定められていたり,動物愛護法上の犬・猫は例外扱いされていたりと,なかなかに奥の深い法律であることが分かります。
落とし物のネコババが窃盗罪になるか占有離脱物横領罪になるか,は極めて大きな違いをもたらします。両罪は法定刑が大きく異なるのです。
以前私が国選弁護人として担当したことのある事件でも,駐輪場から自転車を盗んだ際,たまたまその自転車が別のところから持ち込まれて所有者が分からなくなっていたため,窃盗罪ではなく占有離脱物横領罪で起訴されたものがありました。その被告人は,刑務所から出た直後で,窃盗だったら実刑確実だったところ,占有離脱物横領罪だったために罰金で済んだのでした。
いち市民としては「やったことが同じなのにそれでいいのか」「刑務所から出た直後に何やってるんだ」といいたくなる部分ではありますが,とにもかくにも両罪の違いは大きく影響する,のであります。
西城秀樹さんのご冥福をお祈りするとともに,正直に生きることの大事さをあらためて考えたいと思います。