2013.9.10 弁護士ブログ
5年以上の労働でパートも正社員に?!~労働契約法改正のポイント~
平成24年8月10日,『労働契約法』が改正されました。
中でも話題となったのが,平成25年4月1日から施行された『無期労働契約への転換』という制度です。
こちらは,契約社員や嘱託社員,またはパートアルバイトといった「有期労働契約」の労働者が反復更新し,
通算で5年を超えた時は労働者の申込みにより,期間の定めのない労働契約,つまり「無期労働契約」に
転換できるという内容です。
具体的には,「1年契約や6ヵ月契約等の有期労働契約」が繰り返し更新され,
通算で5年を超えた場合,「無期労働契約」に転換できます。
最大ポイントである『5年ルール』ですが,骨抜きならないよう,契約時に「無期転換の申込みはしない」ことを
更新条件にするのは『無効』と解しています。
しかし,無期労働契約者をたくさん抱え込みたくない雇用主が「5年間到達前に契約期間満了で雇止めする」
など,ルールを逆手に取ったケースが出る恐れもあります。
そのため,改正法では「雇用止め」禁止規定が置かれています。
これは,労働者が有期労働契約の更新の申込みをした際,雇用主が当該申込みを拒絶することが客観的に
みて合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,「従前の有期労働契約の内容で
ある労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす」規定です。
そして重要なポイントは,『正社員と同じ待遇が得られる』訳ではないということです。
仮に無期労働契約に転換したとしても,別段の定めがない限りは,『直前の有期労働契約と同一』になります。
ただし,今回の法改正では「期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止」規定が設けられましたので,
有期労働契約締結の段階で正社員と比較して不合理な内容での労働契約の締結自体が禁止されました。
なお,新しい制度の適用は平成25年4月1日以降の契約分からとなります。
つまり,実際の切替は最短でも平成30年4月ということです。
いわゆる「派遣切り」のような不安定な立場から救済されるため,労働者にとっては朗報とも言える改正では
ありますが,無期雇用になるためには,労働者自らが意思表示をしなければなりません。
また,有期労働契約と有期労働契約との間に6ヵ月以上の契約関係の無い空白期間(クーリング期間)があると,
再び「0」からの出発となる点も注意が必要です。
今回の労働契約法改正では,無期労働契約への転換や不合理な労働条件の禁止など,これまでの雇用の
不平等を是正する改革も盛り込まれてはいますが,全てが諸手を挙げて喜べるものとは言えないようです。
そして「有期」「無期」と体系を隔てる以上,日本の労働環境には,様々な問題があふれています。
労働問題でお困りの際には,ぜひ弁護士事務所へご相談下さい。