2017.8.17 企業・ビジネス
特別清算手続を利用して会社を清算した事案
事例まとめ
案件概要
長引く不況により融資金の返済不足に陥ったA社は、会社を清算したいと考えていました。依頼を受けた当事務所は簡易迅速な手続で、かつ関係者の自治が尊重されている特別清算手続を利用して、すべての債権者らの同意を得た上で、申立から1年程度でA社を清算しました。
相談時
A社は、銀行等から融資を受け、外航船船舶の貸渡業を営んでいましたが、船舶市況の著しい悪化に伴い、融資金返済不能の状況に陥いりました。A社は、約20億の債務超過の状態にありました。
A社の債権者の数は、金融機関2社及びほか3社でした。
A社は、すべての債権者らの同意を得た上で、簡易迅速な手続でかつ関係者の自治が尊重されている特別清算手続で会社を清算することにしました。
用語解説
特別清算手続とは?
特別清算とは、清算中の株式会社につき、裁判所の監督のもとに行われる清算を目的とした倒産手続をいいます。
特別清算手続の主な特徴は、破産ほど手続が厳格ではなく、簡易迅速な手続で、関係者の自治が尊重されている点です。
債務者である清算会社は管理・処分権を失いません。また、破産の場合は破産管財人が選任され、否認権を行使される可能性がありますが、特別清算では、否認の制度はありません。
特別清算は、破産と比較すると、ネガティブなイメージも希薄です。
特別清算を申し立てることができるのは、解散した株式会社(清算株式会社)のみです。そこで、事前に株主総会を開催し、解散決議を得る必要があります。
特別清算の手続の概略は、特別清算の申立後、清算人が協定案を作成し、債権者集会において出席債権者の過半数及び総債権額の3分の2以上の同意を得て協定案が可決されると、清算人が協定案に沿った弁済を行うというものです。
したがって、特別清算が利用できるのは、債権者の上記同意が得られる見込みがある場合ということになります。この同意が得られる見込みがない場合は、通常、破産手続を選択することになります。
清算人には、従来の会社代表者やその代理人弁護士が就任する場合が多いです。特別清算の申立ができるのは、債権者・清算人・監査役・株主です。法律上は職権により開始される場合もあるとされていますが、実務上は極めて少ないです。
清算株式会社に債務超過の疑いがあるときは、清算人は、特別清算開始の申立をしなければなりません。
特別清算手続の流れ
特別清算手続の簡単な流れは、以下の通りです。
特別清算の申立
↓
裁判所による特別清算開始決定
↓
第1回債権者集会
清算人による、清算株式会社の業務・財産の状況調査の結果・財産目録等の要旨報告
清算の実行の方針・見込みに関する清算人の意見陳述
今後の清算事務の処理についての説明
↓
協定案申出
清算株式会社による、債権者集会に対する協定案の申出。
↓
第2回債権者集会
協定案の決議。協定案の可決には、出席した議決権者の過半数かつ議決権者の議決権の総額の3分の2以上の議決権を有する者の同意が必要となります。
↓
協定の認可決定又は不認可決定
↓
債務の弁済
協定の認可決定が確定後、当該協定に従って弁済が行われます。
↓
特別清算終結決定
当事務所の活動
本件では、清算人代理許可申立てを行い、裁判所の許可を得た上で、清算人代理が開始決定後の特別清算業務を遂行しました。
債権者数も少なく、あらかじめすべての債権者により協定案への同意が得られていたことから、債権者集会は1回で終了しました。
A社は、資産として債権を有しておりましたが、回収不能な債権であったため、裁判所の許可を得た上で、債権放棄を行いました。
協定に従って、A社が債務の弁済した後、債権者は債権放棄を行いました。
その後、特別清算終結決定の申立てを行い、特別清算終結決定がなされました。
担当弁護士のコメント
本件では、A社の負債額が大きかったものの、すべての債権者らの同意を得た上で、特別清算手続を行うことができました。
特別清算手続は、簡易迅速な手続です。本件でも申立てから1年程度で終了することができました。