2022.9.26 相続・遺言
相続・遺産分割に関する事例紹介
事例
相談内容
母が死亡して遺産を兄弟姉妹3人(長男A,二男B,長女C)で分割する話を始めていましたが,株をどうするかで長男Aが相談に来られました。
母の遺産は宅地と居宅及び銀行預金3600万円と上場企業の株3万株です。
宅地と居宅は不動産会社に査定をしてもらったところ2社の平均をとると,宅地は2500万円,居宅は300万円でした。
ただ,相続の話を始めたときは株の価格は1株600円程度でしたが,二男Bが東京に住んでいるため話を進めるのに時間がかかり1年たった現在では1株1000円になっています。相続の話を始めた時の価格でするべきか現在の価格でするべきなのかを含めて,長男としては遺産分割の円満な解決を図りたいと考えて交渉の委任に来られました。
交渉経過
不動産(土地,建物),株式などの不可分物が遺産であるときに,遺産の評価が必要です。
遺産評価の考え方としては,「相続開始時説」と「遺産分割時説」の2つがあります。
札幌高裁の判例は,「遺産の対象となる財産の評価は,遺産分割時における価値による」とされています。
遺産の土地と建物については,土地が2700万円,建物300万円で相続人の合意が出来ました。銀行預金は3600万円,株式は遺産分割の話が進み株価をどう評価するかの話が出た時点から過去1か月の平均株価1,000円であったのでこの額を株の評価額として計算し3000万円としました。
遺産合計額は9600万円と評価することで合意が出来ました。
遺産の分割は,土地・建物は長男Aが単独取得し、二男は上場株式3万株を単独取得します。銀行預金3600万円は長女Cが単独取得しますが,代償金としてAに200万円を支払い、Bに200万円を支払うことで遺産分割の合意書を作成しました。
弁護士からのコメント
遺産の評価方法として。「相続開始時説」と「遺産分割時説」が対立していますが,札幌高裁の判例のように「遺産分割時における価格によって行うこと」とするのが現実的であると判断します。