2025.2.26 相続・遺言
相続コラム ①
~相続でもめる原因~
相続でもめる原因として①遺言が無い場合、法律で相続分が決められていますが、それでも被相続人(亡くなった方)にどれほど介護その他献身をしてきたか、人間関係の距離、過去に大学の進学費用や結婚の際の住居費用を出してもらったことがあるか、ないか等、優遇されていた相続人とそうでない相続人の間で法律の定め通りでは納得がいかないという自然な感情があること、遺言がある場合は被相続人がえこひいきをしていると考える、遺言で不利に扱われた相続人の不満が生ずることが主な原因です。相続は、ある意味人間の人間らしさが表出する重要な場面ということもできるでしょう。
相続法の特徴
相続法は 「民法(第5編 相続)」 に基づいており、遺産の分配や相続人の権利を規定しています。主な特徴を以下にまとめます。
- 相続の基本原則
- 被相続人(亡くなった人)の財産は法定相続人に承継される
- 相続は死亡時に自動的に開始
- 遺言書があれば、原則としてその内容が優先
法定相続人の範囲
法定相続人(民法887条~890条)は以下の優先順位で決まります。
順位 |
相続人の範囲 |
相続割合(配偶者がいる場合) |
第1順位 |
子(直系卑属) |
配偶者1/2、子1/2(複数なら均等割) |
第2順位 |
直系尊属(親・祖父母) |
配偶者2/3、直系尊属1/3 |
第3順位 |
兄弟姉妹 |
配偶者3/4、兄弟姉妹1/4 |
-
偶者は常に相続人配 となる
- 子がいない場合 は直系尊属(親や祖父母)が相続
- 直系尊属もいない場合 は兄弟姉妹が相続
- 子が先に死亡している場合 は孫が代襲相続
-
遺産分割の方法
相続人は以下の方法で遺産を分割できます。
(1) 遺言による分割
- 遺言書がある場合 → 遺言の内容が優先される
- 遺言書には 自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言 の3種類がある
- 遺言がない場合、法定相続分に従う
(2) 遺産分割協議
- 相続人全員で話し合って遺産を分配する方法
- まとまらない場合は 家庭裁判所の調停・審判 に進む
(3) 法定相続分による分割
- 遺言がない場合、法律で決められた割合(上記の表)で分割する
- 遺留分(いりゅうぶん)の保護
- 遺言によって法定相続人の取り分が減らされる場合でも 最低限の取り分(遺留分) は確保される
- 遺留分の割合:
- 直系卑属(子・孫):法定相続分の 1/2
- 直系尊属(親・祖父母):法定相続分の 1/3
- 兄弟姉妹は遺留分なし
例:
- 夫が全財産を愛人に遺贈しても、妻や子は遺留分侵害額請求をして取り戻せる
- 相続の放棄・限定承認
(1) 相続放棄
- 借金が多い場合、相続人は 相続を放棄 できる
- 家庭裁判所に3ヶ月以内に申請 が必要
- 放棄した人は最初から相続人でなかったことになる
(2) 限定承認
- 相続財産の範囲内で負債を引き継ぐ方法
- プラスの財産の範囲で借金を返済する
- 相続人全員が 共同で申請 する必要はなく、個々の相続人毎に決められる。
- 相続税のルール
日本では一定額を超える遺産に 相続税 がかかる。
(1) 基礎控除額
- 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)
- 例:法定相続人が妻と子2人(計3人)なら 基礎控除額4,800万円
- 4,800万円以下の遺産なら 相続税なし
(2) 相続税の税率
課税額 |
税率 |
1,000万円以下 |
10% |
3,000万円以下 |
15% |
5,000万円以下 |
20% |
1億円以下 |
30% |
3億円以下 |
40% |
6億円以下 |
45% |
6億円超 |
55% |
- 配偶者には 配偶者控除 があり、 1億6,000万円 or 法定相続分のどちらか大きい額まで非課税
- 2023年の相続法改正
最近の改正ポイント:
- 自筆証書遺言の方式緩和(財産目録をパソコンで作成可)
- 配偶者居住権の創設(配偶者が自宅に住み続けられる)
- 遺産分割前の預貯金の引き出し制限緩和
- 特別寄与制度の導入(介護などで貢献した親族に金銭請求権)
まとめ
日本の相続法は「法定相続」と「遺言の尊重」を基本としつつ、相続人の最低限の権利(遺留分)も守る仕組みです。また、相続放棄や限定承認による負債の回避、相続税の控除制度なども整備されています。
ポイント
- 法定相続人は 配偶者 + 子(なければ親や兄弟)
- 遺言があればそれが優先(ただし遺留分あり)
- 借金が多ければ 相続放棄や限定承認が可能
- 相続税の基礎控除 を超えると課税される
- 配偶者は特に優遇されている
相続はトラブルになりやすいため、事前に弁護士に相談しましょう。