2022.9.27 相続・遺言
相続・遺産分割に関する事例紹介2
相続・遺産分割に関する事例紹介
相談内容
夫が交通事故で死亡したことによる相続の問題で相談に妻であるA夫人が来られました。
A夫人は妊娠7ヶ月とのことです。
夫の遺産は夫の親の援助で購入したマンションと銀行預金500万円です。
マンションの購入に際しては,夫の父が1500万円出し,夫が自己資金として500万円出して,住宅ローン1500万円を借りました。
マンションの所有者は夫になっています。
マンションを買ってから5年目に夫が交通事故で死亡しました。
これからどのようにしたらよいか不安なので夫の遺産の問題と,交通事故の賠償金の問題を併せて委任したいとの要望でした。
民法886条1項は「胎児は相続については,既に生まれたものとみなす。」と定められていることから,夫の遺産の相続人は妻と胎児の2人となります。
よって,夫の遺産はマンションと銀行預金500万円ですが,負債として住宅ローの1500万円も相続することになります。
胎児が出生した後に,交通事故の賠償金については保険会社と交渉を進め7200万円で示談解決がつきました。
近親者の賠償金として,父親への慰謝料100万円,母親への慰謝料100万円を渡した残りの賠償金7000万円が妻と産まれた子供の相続遺産となりました。
結果として,相続財産は6000万円(7000万円+500万円―1500万円)となり,妻が3500万円,子どもが3500万円相続することになりました。
【弁護士からのコメント】
胎児は,相続についてはすでに出生したものとみなすとされている(民法886条1),このことを「胎児の出生擬制」と言います。この出生擬制は,損害賠償請求権(民法721条)や遺贈(民法965条)についても同様の規定が置かれています。