2013.10.8 弁護士ブログ
残業代
先日、政府が導入を検討していた「残業代ゼロ」特区につき、導入を断念する、との報道がなされました。
報道の中身を見ると、導入を検討していたのは、日本版の「ホワイトカラー・エグゼンプション」と言われるもので、一定以上の年収の場合や、特定の業種に限り、労働者の残業代をゼロにすることを認める仕組みの構築を目指していたようです。
現在、日本では、残業代は基本的に「労働基準法」という法律で規定されており、原則として、労働者が1日8時間以上、1週間で40時間以上働いた場合には、通常の場合に比べて、少なくとも25%増しの賃金を支払う必要があります。
もちろん、仕事の種類によっては、あらかじめ繁忙期と閑散期が決まっているものもあり、繁忙期の所定労働時間は長く、閑散期の所定労働時間は短くしたい、という場合もあります。そういった場合には、変形労働時間制を導入するなどすることで、上記の原則とは異なる決め方をすることもできます。
そして、現在の法規制では、労働時間に関する規定の「適用除外」に該当した場合のみ、上記の残業代を支払わなくてよいとされています。
一般のサラリーマンの方に関係し得る適用除外の規定としては、「監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」に当たる場合、があります。「監督若しくは管理の地位にある者」については、略して「管理監督者」と言われます。
例えば、勤め先の会社の規定で、課長に就任後は残業代が出ない、と決まっている場合、会社側としては、課長は、管理監督者であるから、残業代を支払う必要がない、という考えに立っているものと考えられます。
しかし、実際に「管理監督者」であると言えるかは、きちんと役職手当による補償がなされているか、とか、勤務時間を自分で決められるか、などから、個別具体的に判断され、争いになった場合には、最終的には裁判などで決めることになります。
近時、「名ばかり管理職」の残業代請求について報道されることもあります。
多店舗を展開する小売業や飲食業に関しては、厚生労働省から、管理監督者の範囲の適正化に関する通達も出されています。
会社側は、きちんと規定を整備し、管理監督者に該当しない者には残業代を支払う必要があります。一方、労働者側からも、自身の処遇が適正であるかを、一度、確認されてみてはいかがでしょうか。